世界的なベストセラーとなった
ミレニアム三部作を書き上げた
スティーグ・ラーソン亡き後、
別の作者によって書かれた続編の
『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』
リスベットやミカエルは
果たしてどうなったのか?
ストーリーのネタバレあらすじと
新作者によるストーリーの感想と評価、
突っ込まずにはいられない
由々しき問題点のまとめです^^
ミレニアムとは?
スウェーデンの作家、
スティーグ・ラーソンが書いた
ミレニアムは、
第一部「ドラゴン・タトゥーの女」
第二部「火と戯れる女」
第三部「眠れる女と狂卓の騎士」
が世界的なベストセラーとなり、
映画化もされました。
作者のラーソン氏は
ミレニアムを十部作にする予定で、
すでに第五部までの
ストーリーを考えていて、
第四部を200ページほど
書いたところで、
ミレニアムの発刊を待たずに
心臓発作で他界してしまいました。
第四部の200ページは、
ラーソン氏のパートナーが
管理しているのですが、
出版されていません。
ところが、ラーソン氏の遺稿とは
関係なく、別の作者である
ダヴィド・ラーゲルクランツにより
第四部が書かれ、出版されました。
第三部までが世界的ベストセラーで
続編が待望されていたという
ハードルが高すぎる状況の中、
ラーゲルクランツ氏による
第四部はどうだったのか。
まずはネタバレあらすじから
ご紹介します。
完全ネタバレしてますので、
読んでもいい方のみ、
続きをどうぞ^^
蜘蛛の巣を払う女のあらすじ
ザラチェンコとの片が付き、
ホっとしたのもつかの間、
まだまだリスベットには
壮絶な過去がクモの巣のように
貼り付いていました。
今回の相手は、
リスベットの双子の妹、
カミラです。
ザラチェンコのDNAが
よほど特殊なようで、
彼の子供たちはみな特異体質で、
カミラの場合は、
悪意を秘めた暴力を好む性格で、
美しい容姿を駆使しながら、
精神面で人をたらしこむのに長け、
自分は動かず、とり巻きたちに
自分の目標を達成させてしまう
恐ろしい女性です。
カミラはザラチェンコにすら
可愛いがられ、
ザラチェンコの莫大な遺産の
大部分を継ぎ、その資産を元に、
裏の世界で暗躍するようになり、
その一端で、人工知能の売買も
しています。
人工知能の開発をしていた
バルデルが、人工知能を取り巻く
裏の売買の構造を知ってしまい、
消されてしまいます。
その事件にジャーナリストの
ミカエルが絡んできます。
ミカエルは、ザラチェンコ事件の後、
鳴かず飛ばずの記事しか書けず、
すでに時代遅れと呼ばれ、
雑誌ミレニアムの経営も傾き、
ミレニアム社の株式が
大手出版会社セルネルに買い取られ、
ミカエルはミレニアムから
追い出されそうになっています。
バルデルが消される直前に、
人工知能の密売のタレ込みが
ミカエルに入ったことから
ミカエルはバルデルが殺される時に
そばに居合わせます。
また、人工知能とバルデルの件に
リスベットが絡んでいることを
知ったミカエルに火がつき、
かつてのような活躍をみせます。
リスベットは、カミラの影を追い、
アメリカの国家安全保安局(NSA)を
ハッキングして人工知能の
売買に関する情報を得ます。
NSA内に産業スパイによる
裏切りがあり、
リスベットはわざと
ハッキングがわかるようにして
そのことをNSAに知らせながら
人工知能に関する暗号化された
重要ファイルも入手しますが、
リスベットにすら
その暗号が解けません。
殺されたバルデルの息子の
8歳の少年アウグストが、
バルデルが殺害される場にいて
事件現場を目撃したのですが、
アウグストは自閉症で
話すことすらできません。
ところが実はアウグストは
サヴァン症候群でもあり、
見たものを写真のように
正確な絵に再現できる
映像記憶の能力で
目撃した殺人犯を描けることで
命が危険にさらされます。
アウグストとリスベットが
共に逃亡する間に
アウグストはリスベットの導きで
天才的な数学的能力も
発揮できるようになり、
リスベットが入手した
暗号ファイルの解読に成功します。
ミカエルは事件の顛末を
ミレニアムに掲載し、
ミレニアムは息を吹き返し、
株式の買戻しにも成功します。
カミラは第四部では逃げおおせ、
今後の続編に続くようになっています。
感想
ラーゲルクランツ氏による
ミレニアム4、おもしろかったです^^
第四部からのストーリーは、
ラーソン氏が想定していたのものは
採用せず、ラーゲルクランツ氏による
オリジナルになっています。
ラーソン氏のミレニアムの
設定や背景を
踏襲しようとはしていますが、
やはりラーソン氏とは違っています。
でも、それはしょうがありません。
第三部までと同じ舞台設定の
新シリーズということで、
いいミステリー小説として
完成していると思います。
読んでいて違和感を感じたのが、
アンドレイがミカエルの誘いを
断ったシーンと、最終章です。
最終章は、伏線を回収しながらも、
唐突に内容が薄くなって
しまってました。
特にアンドレイの件は
とってつけたようで、
そんなこんなで、アンドレイは
本当は生きのびていたものを、
殺されたことに
後から書き直したのでは
ないかと思っています。
ラーソン氏は、
ミレニアムに登場する
ミカエルに自分を投影しているのか、
社会的な面を重視していて、
ストーリーが重い面があり、
それとミステリーが
組み合わさっているのが新鮮で、
そこが小説『ミレニアム』の
魅力となっていました。
ラーゲルクランツ氏には
ラーソン氏のような重みがなく、
全体を通して陰鬱さがありません。
アンドレイの死の設定によって、
ミカエルが書いた
ミレニアムの雑誌の記事が
より社会性を帯び、
ミレニアムらしくなります。
それで、ラーソン氏調にするのに、
アンドレイの人生に変更が
なされたのではないかと。
また、スウェーデン公安警察内に
内通者がいて、
ヘレーナがいかにも怪しい
感じにしておきながら、
実は違っていた件と、
NSA内の裏切り者の設定も唐突で、
どちらも驚きや納得に
なりませんでした。
このあたりも、
ラーゲルクランツ氏が
書いたものに対して
後から変更があり、
それが最終章でのトーンダウンに
なっているような気がします。
アウグストの能力の開花も
あまりにできすぎでした。
また、リスベットも精神面で
非常に人間味を帯びていて、
これは、ミカエルをはじめ、
パルムグレンやプレイグなど
信頼できる人たちとの出会いが
リスベットを変えたとも思えますが、
それにしても普通の人になりすぎかとw
この、陰鬱さがない
ベースがハッピーな設定が
ラーゲルクランツ氏の
持ち味のようです。
第三部までとは
違う味付けではありますが、
第四部は、これまでのストーリーと
新ストーリーをうまく接続でき、
続編に期待ができる作品に
なっていると思います^^
著者ダヴィド・ラーゲルクランツとは
ラーゲルクランツ氏は、
ジャーナリスト養成学校出で、
タブロイド紙の記者をした後、
作家に転身し、
ノンフィクションや小説を
執筆していて、
『I AM ZLATAN ズラタン・イブラヒモビッチ自伝』が
ベストセラーとなっています。
また、ラーゲルクランツ氏の
お姉さんが女優さんで、映画の
『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で
セシリア・ヴァンゲル役を
演じているつながりもあります。
許しがたい大問題
私は単行本でミレニアム4を
読んだのですが、
上巻の最後にある訳者あとがきが
やらかしてまして(^^;
下巻でリスベットと
アウグストが共に逃げることに
言及されているのです。
上巻を読んだ時点で
そうなるであろうことは
想像がつきますが、
ここで言及してはいけません!w
文庫本になったら
どうなるかわかりませんが、
たまにある出版上のミスですね。
ミレニアムの今後の予定
第四部『蜘蛛の巣を払う女』も
ハリウッドでの映画化が
決定しているそうです。
また、ラーゲルクランツ氏により
2017年に第五部、
2019年に第六部を刊行することが
決まっているそうです。